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2016年3月、ブラッドピットらが出演する映画「マネーショート」が日本でも公開になります。これは2008年のリーマンショックが題材となっており、2016年アカデミー賞で5部門にノミネートされています。しかし、奇しくもこのタイミングで、現在のマーケットではリーマンショックの再来が心配されています。

世界の株式市場は2016年初から大きく下落していますが、この要因の一つにドイツ銀行の経営不安があります。どういうことかと言うと、下記の通りです。

  1. ドイツ銀行とは世界有数の投資銀行(証券会社と銀行の機能を持つ会社)
  2. ドイツ銀行は経営が悪化しており、約9,000億円という膨大な赤字を発表
  3. ドイツ銀行は、リーマンショックで傷ついてから、”CoCo債(ココ債)”という複雑な商品を大量に発行することで健全になったように見えていた
  4. 今回の経営危機が信用不安を呼び、”CoCo債”が叩き売られたり、価値が暴落するのではと投資家が心配している
  5. 一連の流れがリーマンショックを想起させ、景気悪化に結びつくかもしれない

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1. ドイツ銀行とは世界有数の投資銀行(証券会社と銀行の機能を持つ会社)
2. ドイツ銀行は経営が悪化しており、約9,000億円という膨大な赤字決算を発表

ドイツ銀行は、ドイツ国内で最大の投資銀行です。そのドイツ銀行が、約9,000億円もの膨大な赤字を出しました。このため、一気にドイツ銀行の経営に対する不安が高まりました。日本で言えば、三菱UFJグループが倒産するかもしれない、というニュースと同等またはそれ以上のインパクトがあるでしょうか。

これまでドイツ銀行は、ドイツ政府の意向もあって企業への融資を大幅に増やしてきました。排気ガス不正問題で倒産の危機にあったフォルクスワーゲンに1兆円もの追加融資をしたりしていたのです。それがアダとなって、ここにきて不良債権が増加しているようです。貸したお金が返って来ず、焦げ付いてしまうケースが増えているわけです。

また、これまで高収益を叩き出していたアンシュ・ジェインというカリスマCEOが2015年に辞めてから、融資以外の収益もさらに悪化しています(余談ですが、このアンシュさんは、潰れかけのギリシャに大きく賭けるなどものすごく高いリスクを取る人で、危なっかしすぎて辞めさせられました)。

以上より、ドイツ銀行に対して、「今後もっと損失が膨らむのではないか」とマーケットが心配しているのです。

ドイツ銀行の懸念

 

3. ドイツ銀行は、リーマンショックで傷ついてから、”CoCo債”という複雑な商品を大量に発行することで健全になったように見えていた
4. 今回の経営危機が信用不安を呼び、”CoCo債”が叩き売られたり、価値が暴落するのではと投資家が心配している
5. 一連の流れがリーマンショックを想起させ、景気悪化に結びつくかもしれない

2008年のリーマンショックの後、多くの銀行・証券会社は傷つきました。企業の体力ともいうべき”自己資本”が大きく減ってしまったので、各銀行・証券会社はその体力を増強する必要に迫られました。そこで、体力を手っ取り早く増強させるために注目されたのがCoCo債でした。

CoCo債は正式には【Contingent Convertible Bonds】、日本語では【偶発転換社債】と呼ばれます。CoCo債とは、債券と株式の両方の性質を持った商品です。

CoCo債とは

銀行や証券会社は、リーマンショック後、このCoCo債を大量に発行し、CoCo債を買ってくれた投資家からお金を調達することで、企業としての体力を急速に回復してきました。これまでは景気が上向きで、CoCo債を発行する銀行や証券会社の経営悪化が心配されることもなかったので、多くの投資家がCoCo債を買っていました。

ところがドイツ銀行の経営悪化が明るみになったことで、「ドイツ銀行は投資家にCoCo債の利息を払えないのではないか」「ドイツ銀行のCoCo債は株式に変えられてしまい、元本が戻ってこないのではないか」という不安を呼んでしまったのです。ドイツ銀行の経営がこれ以上悪化するようなことになれば、リーマンショックの時のように、「他の銀行も危ないのではないか」という疑念が連鎖的に発生し、マーケットが暴落する可能性も心配されています。

ただ、ドイツ銀行は、2016年2月8日に「当面支払わなければならない利息は3.5億ユーロだが、今は手元に約10億ユーロあるので大丈夫」という内容の声明を発表しました。さらに、2016年2月12日には「これまでに発行していた債券を、約6,000億円分買い戻す」と発表しました。簡単に言えば、利息は問題なく払えるし、投資家から投資してもらっていたお金のうち約6,000億円分も返す、ということです。

この発表は「6,000億円返済しても体力はまだまだ大丈夫だし、利息も払えるし、ドイツ銀行は大丈夫だ」というアピールとなり、ひとまずマーケットを安心させました。

但し、この6,000億円の中にはCoCo債が含まれておらず、完全に不安を払拭したとは言えない部分もあるため、今後も注視していく必要があるでしょう。

 

出典: Deutsche Bank IR information、Wall Street Journal、日経新聞
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