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よく月初に「米国の雇用統計は…」とニュースでも報道されることがあります。米国の雇用統計は、マーケットが注視するとても重要な統計データです。今日は米国の雇用統計について、投資をするなら知っておきたい基礎的なことについて記載します。

米国の雇用統計とは…

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1. 雇用統計とは米国の雇用者数のデータ
2. 農業以外の仕事に就いている人数が、前月より増えたか減ったかがポイント

米国の景気を占う上で最も重要なデータのひとつに、「雇用統計」と呼ばれる、雇用者数のデータがあります。
雇用者数が増えると景気が良い、雇用者数が減ると景気が悪い、という分かりやすいデータで、多くの投資家が注目しています。データは毎月第1週目の金曜日(ニューヨーク時間)に発表されます。

発表されるのは失業率・製造業部門雇用者数・時間当り平均賃金 ・週間労働時間……など10項目以上ありますが、その中で最も注目されるのは「非農業部門雇用者数」ですこれは、農業以外の仕事に就いている人の数が、前月に比べ増えたか減ったかを追いかけたデータです。

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調査の方法は、就業者数の差を確認する形となっています。「1月に1億5,000万人が働いていたが、2月には1億5,020万人が働いていた。だから20万人増えた」という計算方法です。

ちなみに、農業は、収穫期など季節によって労働者の変動が大きいことから実際の労働人口を算定しづらい側面があるので、農業を外した雇用者数が重視されていると言われています。

また、余談ですが、逆に失業率の算出ではアンケート調査が行われています。これは「仕事についているかどうかを電話で調査する」というアナログなものです。そのため、仕事をしていなくても、たまたま調査の電話が掛かってきたときに家に居なくて電話に出られなかった、というケースなどもあるため、失業率のデータは正確性に少し難があります。失業率についてもいつかまた解説記事を書きたいところです。

3. 原則として、雇用者数(農業以外)が前月比+20万人以上なら景気が上向き、20万人以下なら景気が下向き、と捉えられる

では、雇用者数がどれくらい増えると景気が良くて、どれくらい減ると景気が悪いと捉えられるのでしょうか?

これは、「20万人」という数字が目安となります。原則として、雇用者数が前月比で+20万人以上なら景気が上向き、20万人に届かなければ景気が下向き、と捉えられるのです。では、なぜ20万人という数字が目安となっているのでしょうか?

 

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仮に雇用者が月に20万人増加すると、年間で240万人が増加します。米国の労働人口は約1億5,000万人ですので、年間でおよそ1.6%のプラスになります。経済成長のカギは、労働人口と生産性です。働く人が増えて、その人々の生産性が高まることが経済成長のエンジンになります。つまり、労働人口が1.6%増えるということは、米国の経済が1.6%のプラスになるということと同義と見ることができます。

米国政府はGDPの成長目標を年率2~3%程度(長期的な実質GDP成長率予想は2.0%)に掲げていますが、実際の潜在成長率は年1.5%程度と言われています。米国としては、少なくともこの年1.5%は達成したいところです。

雇用者が毎月20万人(年間240万人)ペースで増えることは、経済的には年1.6%のプラスという水準ですから、成長ペースとして悪くないというサインになるのです。そのため、「20万人」という数字が重要視されています。

4. 雇用統計の前から色々と予想して動いている投資家が多いので、雇用統計が発表されると必ずマーケットが大きく動く、とは限らない
5. 雇用統計は、じわじわとマーケットに影響を与えるので、短期より中期のトレンドを見通すために役立てることが有効

雇用統計のデータが公表されると、マーケットはどう動くのでしょうか?これだけ重要な指標だから、さぞかしマーケットへのインパクトが大きくて、株価や為替が大きく動くものかと思われがちですが、必ずしもそうなるわけではありません。

雇用統計の結果が良くても米国の株価が下がる時はありますし、雇用統計の結果が悪くても米国の株価が上がる時もあります。為替は動きが大きくなることもありますが、必ずしも雇用統計が良かったからドル高になる、ということではありません。時差もある日本の株式市場への影響も、一筋縄ではいかないところがあります。

投資家は予想して先に動いている

実は、雇用統計などの経済指標は、発表当日の株価に対する直接的な影響は薄くなっています。というのも、投資家は、経済指標が発表される前に、「悪い結果になって景気が不安視されるだろうから株を売っておこう/良い結果になって景気改善が見込まれるから株を買っておこう」と予想して先にポジションを取っているため、経済指標の結果が事前に株価に反映されていることが多くなっているのです。そのため、経済指標が多くの投資家の予想通りであれば、マーケットが動くことはあまりないのです。

マーケットの事前の予想と実際の数値が大きく異なる場合、調整が行われる

但し、いつも投資家の予想が当たるとは限りません。もし経済指標の結果が従前の予想よりも大幅に良かった/悪かった、ということになれば、投資家にとってはサプライズになり、急いで自分の戦略を修正することになります。景気が良いと思って株を買っていた人にとって、フタを開けてみると景気悪化が心配されるデータが発表されたら、考えを改めて株を手放すことを考えたりするわけです。そうなった場合にマーケットが大きく動くことがあるのです。

どれくらい調整されるかは分からない

予想は各投資家によって異なる上、各投資家によって投資額なども異なるので、どの程度の調整となるかを読み切ることは難しいです。

雇用統計は重要だと言われてきましたが、こうなると「そんなに重要じゃないのかな?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それもまた違います。雇用統計は、その日の短期的な方向を決めるものというよりも、その後じわじわ効いてくるデータと捉えた方が良いのです。

雇用統計は、月間20万人=年間240万人ペース、というような中期的な成長性を示す目安であるため、毎月第1週の金曜日にデータが発表された後、2週目以降に上昇 or 下落のトレンドを作ることが多いのです。そして、そのトレンドは月末まで続くこともあります。

つまり、データ発表当日や翌日など短期の話ではなく、中期のトレンドを見通す道具として見る方が、より投資の役に立てることができる指標なのです。

なお、リーマンショック以後、FRB(米国の中央銀行)は雇用統計の結果を見極めながら、金融緩和(=景気刺激)を続けてきました。雇用や失業率の回復が続いたことから、FRBは、2015年12月に金融引締(=バブルなど過度な好景気の抑制)を開始しています。このように、米国の雇用統計は、FRBも最重要視する重要な統計データとなっています。最も重要な米国の経済指標と記憶しておいても損ではないでしょう。

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