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サブプライム(信用力の低い個人向け)自動車ローン残高が加速度的に増えていることを受け、2007~08年の記憶が薄れていない米国政府内では懸念が高まっていると言われています。

金融業界は物忘れの激しい業界です。2008年のリーマンショック時に大被害を生み出したサブプライム住宅ローンの思い出はどこへやら、次は自動車を購入する信用力の低い個人向けのローンを増やしているのです

 

1. サブプライムローンは低所得者向けのローン

サブプライムローンとは、返済能力に疑問のある「信用力の劣った低所得者」に対して、高い金利でお金を貸し出す仕組みです。低所得者に対して高い金利で貸し出すのは矛盾している様に見えるかもしれませんが、これは貸したお金を返せなくなる人が現れて損をしても、高い金利に耐えてお金を返済する人がいれば、トータルで損失をカバーできるからです。

サブプライム住宅ローンは、住宅を買うため・建てるためのサブプライムローンのことです。2006年当時は住宅バブルで、もし借り手が返済できなくなれば、金融機関は住宅と土地を差し押さえてまた転売すればお金を回収できたので、気楽に貸すことができました。そのため、貸し倒れを気にせず、低所得者にどんどん貸し出すことになったのです。

とはいえ、やはり低所得者に貸すのはリスクが高いもの。そこで、低所得者向けのサブプライム住宅ローン債権を、細分化して、また別の人に売り払うことを思いつきます。これが証券化です。

例えば、ローン会社AがBさんに金利10%で3,000万円を貸したとします。A社はBさんから合計3,300万円を返してもらう権利があります(=債権)が、返済されるか不安なので、投資銀行Cに販売します。投資銀行Cは、この債権を、他の債権も合わせたパッケージにしてD、E、F…など多数の銀行や生命保険会社に小分けにして販売します。こうなれば、A社、C社はBさんから返済されようがされまいが、リスクゼロになります。D、E、Fは、単独でBさんにお金を貸すよりもリスクは小さくなりますので、リスクが分散できます。こうしてサブプライム住宅ローンは世の中に爆発的に広がっていったのです。

ところが、住宅バブルがはじけたので、サブプライム住宅ローンを返済できない人がとても増え、たくさんのサブプライム住宅ローンが急速に不良債権化していきました。また、住宅の価格も下がり続けますので、担保を取り上げても全く回収ができません。

こうなると、サブプライム住宅ローン入りのパッケージ商品を買った人は、「自分のパッケージ商品はどれくらいサブプライムローン債権が含まれているのだろうか…」と不安になりました。実は、パッケージ商品にするまでに多くの人が介在したため実態が分からず、しかも細分化された債権がたくさん含まれていたので、一体自分がどれくらい損しそうなのかが分からなかったのです。

そうした不安が不安を呼び、サブプライム住宅ローンが含まれているパッケージ商品は叩き売られるようになりました。金融機関の損失は膨大になり、お金の流れが止まってしまうことになりました。これがサブプライム住宅ローン問題です。

 

サブプライムローン

 

2. 新車販売台数は大きく変わっていないのに、自動車ローン残高は過去最高に達している

2015年の米国新車販売台数は1,700万台を超え、大底となった2009年から大幅な回復を見せています。

自動車販売台数

(Source: US. Bureau of Economic Analysis)

米国の経済が緩やかな回復を続ける中、融資環境も徐々に改善し、家計向けの住宅ローン、自動車ローン、学資ローンの残高は全て増加しています。ところが、自動車ローンについては、返済能力に疑問のあるサブプライム層に対する融資が増えています

米国の自動車販売台数が伸びたとはいえ、過去の調子が良かったころの水準に戻ったに過ぎません。ところが、現在の米自動車ローン残高は過去最高の1兆ドル(≒100兆円)に達しています。さらには、サブプライム比率は35~40%となっています。また、昨年の米サブプライム自動車ローンを裏付けとする債券の発行額は、この10年で最高となる270億ドルを超え、前年比25%増となりました。

このように増加の一途をたどる自動車ローンについて疑問視する声は増え、2007~08年ごろの住宅バブル崩壊と景気後退の発端になったサブプライム住宅ローンとの類似点が指摘されています。

自動車ローン残高

(Source: FRB NY Consumer Credit Panel, Equifax)

 

サブプライム自動車ローンを組む消費者の大半は中古車を購入しているとの報道もありますが、それだけで過去最高のローン残高というのは説明が不足しているでしょう。結局のところ、低金利を利用した融資枠拡大と、サブプライム住宅ローンの時と同様に、自動車ローンの融資基準が異常な緩和状態にあるのが根本的な原因であると思われます。

これは、リーマンショックから今日まで、世界の金融機関は何のイノベーションも生み出しておらず、売上を伸ばすためにこうした「弱者」をカモにする事業に回帰してしまっているという事実にほかなりません

おまけに、リーマンショック後の世界的な金融緩和によって、歴史上かつて経験したことがない水準まで世界中の金利が下がった結果、収益性が極端に低下した金融セクターは構造不況業種となってしまっています。これでは悪循環が続くばかりです。やはり、本質的な部分で金融危機は続いていると言えるのかもしれません。

多くの経済アナリストは、「米国は景気回復期にある」「雇用環境は安定している」「ガソリン価格は低く、可処分所得は増えている」「自動車ローンは延滞率が低い」「中古自動車の価格は安定している」といった材料を並べ、サブプライム自動車ローンでバブルが生じるとの懸念を軽視してきました。

ところが、これも2007~08年とそっくりです。あの時も色々とポジティブな材料が並べ立てられ、「住宅マーケットはまだ大丈夫だ」と聞かされ続けましたが、その後何が起きたのかは周知の通りです。

今年に入り、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、米国の自動車ローン市場が「やや緊張状態」にあるとし、一部の銀行では今後損失が拡大するとの見方を示しました。既に大手金融機関経営陣はこれに対して警鐘を発しています。

 

 

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