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ギリシャの債務危機が叫ばれて久しいですが、なぜ債務危機が発生したのか?現在はどのような状況なのか。今回はヨーロッパの債務危機について説明します。

 

1. ギリシャに端を発したユーロ危機

 

事の始まりは2009年10月、EU加盟国の一つであるギリシャで総選挙による政権交代が起こったことでした。新政権が前の政権が国家財政の数字を操作して赤字を過小に見せていたことを暴露したのです。いわば国家の粉飾決算です。ギリシャの財政赤字は2.5兆円ほどだと発表されていましたが、実際は4.8兆円もの財政赤字があったのです。その後、借金の総額は38兆円にも上ることが判明しました。

この粉飾はギリシャのユーロ加盟と関係があると一部では言われています。ユーロ加盟を果たすには、財政赤字をGDP比3%以下に抑え、債務残高をGDP比60%以内に抑える必要がありました。ギリシャの実際の財政赤字はGDP比13%、債務残高はGDP比113%です。とてもユーロに加盟出来る条件を満たしていなかったのです。つまり、ユーロ加盟を果たすために粉飾を行ったのではないかという見方もあります。また、この粉飾には米系の投資銀行が関わっていたのではないかとも言われています。

 

2. ギリシャが借金を膨らました2つの理由

 

1.前政権による人気取り政策

不正を行った前政権(新民主主義党)が支持率維持のために国民からの支持を得やすい政策を行ってきました。その一つが61歳から現役世代給与の8割の金額が貰えるという年金制度。日本では4〜5割ほどの金額しか貰えないことを考えるととても高い金額です。

また、ギリシャは公務員の数が多いことで知られているが、その公務員の給与を毎年のように上げていったのも原因の一つです。

 

2.脱税の横行

ギリシャは歴史的に国家をあまり信用していない国民性で有名です。そのため国民の納税意識が低く、庶民も富裕層も脱税に抵抗が無いと言われています。実際に、商店などでは、レシートを発行しないことで帳簿上の売上を減らし、納税額を意図的に減らしている店が多いのではないかと言われています。その脱税額は年間およそ2兆円。税収の5分の1に相当しているのではないかと疑われています。

 

ギリシャの不正が発覚し、慌てたのは、ギリシャにお金を貸していたEU諸国です。ギリシャが返済不能に陥れば自国の経済も危うくなります。ギリシャの借金のツケがヨーロッパ全体を震撼させました。

ギリシャでは、景気が悪くなったことで、法人税も所得税も減収になりました。ギリシャ国債を買ってもらうほかありませんが、そんな不安定な国の国債など買うところはありません。もし、そのような国債を買う投資家がいたとしても利回りが高くなければ売れません。利回りが高いということは借金をするコストが高くなるということですので、どちらにせよ借金をすることは難しくなります。つまり、予算を組んで景気対策をすることも難しくなります。ギリシャはこのような悪循環に陥ってしまったのです。

 

3. ギリシャから他の国にも飛び火

 

EU諸国としては、ギリシャを助けるしかありません。しかし、ギリシャの救済策が固まらないうちに、「ギリシャの次はイタリアも心配」と考えた投資家がイタリア国債を投げ売り、金融危機はイタリアへと飛び火。ポルトガル、アイルランド、スペインも財政危機が深刻となり、デフォルト(国家の破産)の危険性が叫ばれるようになりました。

これが「ユーロ危機」です。
当時、これらの国々の頭文字をつなげて「PIIGS(「豚」の意をもじったもの)」という言葉がメディアを賑わせました。

アイルランドを除けば、危機に直面したのは南欧のラテン系の国ばかりです。ギリシャが年金支給額を削減し、公務員を減らして緊縮財政に踏み切ったときも、国民は生活が厳しくなるからといって、抗議行動をくり返していました。

これを見たドイツのメルケル首相は、彼らを「怠け者」と批判しました。明るい太陽のもと、長い休暇を満喫する南欧の人々の生活態度に、財政危機を招いた原因があると批判したのです。

 

ユーロ危機によって、ユーロの価値は大きく落ちてしまいました。対円のレートでユーロは100円を切るほどでした。ユーロに代わって世界で信用できる国のお金はどこか?ということになって、世界中の投資家が円を買ったのです。それによって激しい円高になりました。円高によって、日本の輸出企業の業績が悪化して、日本経済に大打撃を与えました。ユーロ危機の結果、ぐるりと回って日本経済も大打撃を受けたということです。

 

4. ギリシャ危機はドイツ・フランスが中心となって食い止めた

 

2010年6月、この緊急事態に対してドイツとフランスが中心となり、大量の資金を出しあって、欧州金融安定基金(EFSF)という基金を設立しました。

ドイツ・フランスは支援をするための基金を積み増しし、国債を市場で買い支えました。ドイツ・フランスからの要求もあり、PIIGS諸国も予算の見直し、公務員を削減、年金の大幅削減をするなど緊縮財政に努めました。

 

EFSFはルクセンブルクに本部を置き、財政危機に見舞われたユーロ加盟国に緊急融資を行うというものでした。これによって、周辺の投資家も、「ギリシャやイタリアの債券は紙くずにはならないぞ」「それなら国債を買ってもいいな」ということになり、しだいに国債を低い金利で売れるようになったのです。
現在、ユーロ導入国は19カ国。導入国が拡大したことで、意思決定に時間がかかるという問題を抱えています。それでも、ドイツとフランスの首脳がいち早く行動したことで、危機を脱することができました。両国のリーダーが優柔不断だったらこうはいかなかったでしょう。

 

このように上手く処理出来たかのように見えたギリシャ債務危機ですが、2015年新たな局面に突入しました。

2015年1月ギリシャでの総選挙で反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が勝利し、チプラス政権が誕生したのです。チプラス政権は、さらなる緊縮策を要求するEU諸国との交渉に強い態度で臨みむようになり、債務危機の解決に暗雲が立ち込み始めました。ヨーロッパの債務危機は日本にも大きな影響を及ぼす問題ですので、今後もその動向に注目していきましょう。

 

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